狂い咲きサンダーロード(1980)
ロックンロール・ウルトラバイオレンス・ダイナマイト・ヘビーメタル・スーパームービー・・・だそうだ(公式キャッチコピーより)。石井聰亙が大学の卒業制作として撮った作品であり、滅茶苦茶な設定にイカれた脚本、最高の音楽と素人役者の化学変化で生まれたパンク映画である。
近未来(笑)。サンダーロードと呼ばれるどこかの都市で鎬を削る暴走族たち。しかし、新道交法の施行により警察の取り締まりは苛烈を極めることとなる。これを機に暴走族は「道交法を順守した愛される暴走族」へと移行する平和協定を結ぶが、武闘派暴走族、魔墓呂死(まぼろし)の特攻隊長である仁(山田辰夫)はこれに反発。集会を襲撃し、出席していたメンバーに怪我を負わせ、数名の仲間と共に新道交法を無視した暴走を繰り返していく。
仁を潰すため、暴走族はエルボー連合を結成。仁は誘拐された仲間を助けるため、エルボー連合の待ち構えるデスマッチ工場跡へと殴りこむ。多勢に無勢な状況
で窮地に立たされる仁。そこに現れた魔墓呂死初代リーダーであり現スーパー右翼の剛(小林念侍)が仲裁を行い、仁の身柄は仲間ともどもスーパー右翼に引き取られる。
そこでの生活も性に合わず、スーパー右翼を抜け出し再び暴走を行う仁達だったが、エルボー連合に発見され、仁は右手足を切断される大怪我を負い仲間の英二は脳死状態とな
る。他の仲間もその恐怖から街を抜け出し、孤独となった仁は麻薬に溺れて放浪するもエルボー連合への怒りと憎しみは消えることは無かった。
麻薬の売人(小学生)の手引きで武器商人と接触し、「街中のやつらみんな、ぶっ殺してやる」と漆黒のバトルスーツを纏った仁はショットガンやバズーカを携えサンダーロードへと最期の決着をつけに行くのだった・・・。
近未来を謳っているものの1980年の日本がしっかりと描かれている。特に暴走族の面構えが80年代してて良い。サンダーロード、バトルロイヤル広場、バッ
クブリーカー砦、エルボー連合、デスマッチ工場、スーパー右翼・・・ネーミングセンスがどれも最高にイカれててクールだ。近未来っぽい響きは全くしないけど。
魔墓呂死リーダーの健と彼女のイチャイチャ(無駄にサイレントになる)や、仲間の茂と右翼の剛のホモカップルぶりなどはギャグなのかなんなのかよくわからない。剛=右翼=三島由紀夫なんだろう。
また、音楽が最高だ。泉谷しげる、頭脳警察のパンタ、THE MODS・・・。学生映画なのに豪華なメンツ揃いである。疾走感のある映像をより際立たせている。
そしてなにより仁のキャラクターが抜群である。カン高い鼻声で滑舌が悪く聴きとりづらいのがなんとも味である。滅茶苦茶な人間で決して隣人にいてほしくは無
いけれど、なんだか憎めない人間に思えてしまうのはラストシーンの笑顔のせいかもしれない。「上等じゃねえの!やってやろうじゃねえよ!」の言い方がたま
らなく良い。
映画として突っ込みどころ満載ではあるが、この時代にしか造れない作品であることは紛れもない事実であるし、なにより異常な熱量を感じることも確かだ。出来がいいだけが全てではないと改めて気付かされる。
ブルーレイ版の製作が決定したようです。
リマスター作業の資金をクラウドファンディングで募るみたいですね。
石井岳龍監督「狂い咲きサンダーロード」の完全復活プロジェクトが始動 https://eiga.com/news/20160510/6/
キレイな画質で観るような映画かなあ・・・。