タワゴト

爆笑問題について(主に太田光)

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爆笑問題が好きだ。

 

今現在、googleで「爆笑問題」打つとサジェストで「消えてほしい」と出る程にはアンチの数も多い。そのことについては「まあそうだろうな」という気持ちは拭えない。
それでもネットで過去記事を拾っていくと、ここ数年で爆笑問題の、特に太田光の再評価が著しいのだという。
この件について、個人的な爆笑問題についての想いを軸に、彼らについて少し書きたいと思う。

 

僕が爆笑問題を知ったのは1997年頃。当時既にボキャブラ天国にて「不発の核弾頭」なるキャッチフレーズで人気を得ていた。らしい。
というのも、僕はテレビ番組に疎く、名前こそ聞いたことはあったもののその実態はよくわからなかった。
ボキャブラ自体、何度か見たことはあったもののその面白さがよく理解できなかったのだ。長い振りでダジャレを言うだけの何が面白いのだ。という姿勢だった。

そもそも自室のテレビはアンテナ線が繋がっておらず主にゲームやビデオ再生用で、テレビ番組を見るには親と一緒に居間にいなければならない、という家庭環境が大きく作用している。
中学生の僕は親と一緒にテレビを見るのがとても苦痛だったのだ。共感性羞恥が強かったのも理由の一つだと思う。
その代わりに自室で聴けるラジオが好きになり、中学に入ったあたりから深夜放送を聴くことが、つまらない日常の中でほぼ唯一と言っていいほどの楽しみだった。

 

中三の夏ごろに初めて聴いた爆笑問題カーボーイの印象は「しっとり」したものだった。
お笑い芸人の深夜放送はよく男子中学生のノリに例えられることが多いが、カーボーイは文化系中学生の放課後という感触が強かった。
「好きなアルファベット」みたいなテーマで延々喋ってたり、二人の学生時代の話が多かったからかもしれない。初期は「学校ネタ」が多く、学生向けを意識していたように思う。
また、深夜放送にしては下ネタが少なかったのが好印象だった。裏番組の松村邦洋のANNが酷かっただけに特にそう感じたんだろう。(ちなみに爆笑と松村は太田プロの同期だ)

 

カーボーイから爆笑問題に入り、「日本原論」や「天下御免の向こう見ず」を買ったころにはすっかり太田信者になっていた。それでも自分の中の爆笑問題はラジオと書籍の中だけの存在であり、動いている姿を見た記憶はあまり無い。多分漫才も見たことが無かったはずだ。
1999~2000年ぐらいからゴールデン・プライム帯での番組が増え、ラジオでもテレビ収録の話題が多くなってきた。
そのあたりからカーボーイ内で常連投稿者の優遇を強く感じるようになった。
長文系のコーナーで先週の放送を要約しただけのものが読まれたり、スタッフいじりが加速したり、挙句は以前のコサキンで小堺一機が話したエピソードをそのまま書いた投稿も見られた。

少しずつ構成スタッフの力量に疑問を感じるようにはなっていたが、それでも二人の掛け合いは面白かったので楽しめてはいたのだ。
2001年最初の放送で、太田は全てに飽きていると告白したのち、コーナーをすべて終了させ、思い付くままに大量のコーナーを作った。
ハガキ職人からするとたまったものではないだろうが、聴いてる分には滅茶苦茶やってるなあと思いつつそれなりに今後が楽しみではあった。常連を切るという意図があったのかは不明だが、結果的に離脱者は出た模様。

 

up’s(今のJUNK)は月火水と聴いていて、中学高校時代は毎週カセットテープに録音するぐらい熱心だったのだけれど、丁度このあたりで僕は高校を卒業し大学へ進学するという環境の変化もあり、少しずつ深夜放送から遠のいていった。
深夜の馬鹿力もカーボーイと同じぐらい好きだったのだけれど、段々とリスナー(ハガキ職人)が伊集院の価値観を全肯定するイエスマンの集まりのように思えてきて心が離れた。
流行のものや人気のあるテレビ番組を小馬鹿にしないといけない強迫観念に駆られているように見えた。彼らが心からそう思ってるならいいんだけど。

 

大学入学後は気が向けば聴くぐらいの頻度になり、そのうち全然聴かなくなってしまった。
2003年ぐらいにたまたま聴いたカーボーイは以前よりも田中に対する太田の当たりが強くなっているように感じ、以前のふざけあうノリでのケンカとは違う、本気っぽい太田のいら立ち具合が聴いていてとても辛かった覚えがある。田中の人格を全否定して反論を一切させない様にまくしたてる太田の詰め寄り方は笑えるものではなかった。

ちなみに深夜の馬鹿力では後輩芸人を騙して山奥に捨ててくるという企画をやっていて、これにもドン引きした。
二十歳を越えて単に自分が深夜ラジオの適齢期を過ぎただけなのだと思えばそれでいいのだけれど、それらは妙に悲しかった。
「太田総理」が始まった頃とカーボーイ内での「太田はこう思う(二時間太田がぶっ続けで政治とかを語る企画)」が同時期だったかはもう覚えていないけど、この頃2ちゃんねるで猛烈にアンチが発生していて、その否定的な書き込みの群れは目を覆うようなものばかりだったが、的外れな意見とは言えない分なんとも居心地の悪い思いをしたものだ。

 

就職してテレビもラジオもほとんど触れない生活を10年近く過ごした後、ふと思い出したようにカーボーイを聴いた。
正直まだやってたのかという気持ちが強い。月曜火曜以外はメンツが変わっていたし、あの永遠に続くと思われたコサキンは終わっていた。
僕が18歳の時に35歳だった爆笑問題はもう52歳になっていて、僕は当時の二人と同じ35歳になっていた。懐かしい友達と再会したような気分だった。
二人の掛け合いは当時とあまり変わってなかったように思えた。太田の笑い方と活舌が少し変わったぐらいだろうか。それでも一時期のギスギスした雰囲気は感じられず、ヒカリとウーチャカの喋りは相変わらず僕を魅了した。

 

しばらく気の向いた時には聴くという生活を続けるうちに、自然と爆笑問題熱が再燃し、ネットで情報収集を始めた。
すると、相変わらず根強いアンチは健在なものの、以前と比べて好意的な印象が多くみられたのだ。
ネットでよく目にしたのは、「太田上田」で太田が好きになった。本当にヤバいのは田中。いや、光代だ。太田は優しい。というものだ。

 

僕のブランク期間(大体2005~2018年ぐらい)に太田光を知った人は、太田は空気を読まずに暴れてはスベるを繰り返すつまらないやつという印象が強いらしく、「太田上田」での意外とまともで教養があり恐妻家で可愛いという姿が新鮮に感じられたみたいだった。
太田が収録時間を無視して延々喋ったり、空気を読まずに暴れて大惨事を起こすというのは2000年前後にはあまり見られなかった姿であり、個人的にはそっちの方が新鮮だった。

どちらかと言えば昔の太田はボソッとセンスのある事を呟いて笑いを起こすタイプだったはずだ。ビートたけしのANN事件や将門塚の件で片鱗は出ていたようだけど、番組をめちゃくちゃにする感じではなかった(ボキャブラの楽屋では暴れてたらしいが)。これはMCを担当するようになって出来ることの幅が広がったからかもしれないし、キャリアによって番組内での立場が向上したからかもしれない。生放送で暴れるのはいいともレギュラー以降だと思われる。

恐妻家キャラがよく知られるようになって破天荒な行動がある程度許容されるようになったという意見(ウエストランド井口等)があるのだが、太田はいつの間に恐妻家キャラになったのだろう。
現在では「社長」や「光代」の単語が出るだけで委縮する姿を晒すというのが定番のやり取りになっているが、以前はフランクに「みっちゃん」のことを話していたように思う(太田光代が奇人で破天荒なのは昔からだが)。よく光代と彼女の母が言い争いをしている話をカーボーイでしていた。

太田が後輩に優しいというのも意外だった。既に大御所クラスの地位があるにも関わらず若手芸人に積極的に絡んでは突っ込まれて笑っている太田。若手のネタを見て誰よりも笑い、褒めはするがダメ出しはしない太田。今でも精力的にネタを続けている爆笑問題を芸人として尊敬する若手。という良い関係が出来ている。
過去、「5番6番」や「冷やし中華はじめました」に対してそういった扱いをしていなかったように思えたので、後輩に優しいという印象が無かった。これは今でもウエストランドや脳みそ夫などの直の後輩には当たりが強いのでまた別の話かもしれないが。

 

それでも、太田はこの30年間、基本的にはブレていないと思う。露出する媒体によって違う顔が見えるのは意図的なものもあれば無自覚なものもあるはずだ。年齢を重ねて変化した部分も多分にあるだろうが、芸に対する美学や弱者の側に立つスタンスは一貫して崩れていない。とりわけ人の目につきやすいテレビでの振る舞いが目に余るものだった故に太田光の人間的な面白さは伝わりづらくなっていたと感じる。(僕はテレビで度を越えてはしゃぐ太田があまり好きではないです)

 

爆笑問題について語っている掲示板のまとめ記事を読むと、大半が太田田中光代についての関係性や過去の奇行エピソードの羅列である。
漫才のネタについて触れられることは少ない。これはお笑い芸人が語られる上で珍しいのではないだろうか。
漫才がつまらないというわけではない。特番のネタ番組で毎回トリを飾り、多少の出来不出来はあるもののアベレージは出す安定感は健在で、現在でも決して評価は低くない。

それでも語られるのは、あのネタが好き、というものではなく、彼らの人間性の面白さについてが多くを占める。
最後は人間が面白い方が勝つ、というのでもないけれど、爆笑問題の持つ本質的な面白さはやっぱり二人の人間的な面白さであり太田田中のコンビネーションだと思うので、そういった部分がより脚光を浴びれば(出戻り)ファンの一人として嬉しい限りである。

 

-タワゴト
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