「おう、アレだ。アレ聴けばいいんだ。」
はい、前回に引き続き、ビートルズ1にてビートルズ入門を果たした方たちへ向けて、次に聴くべきアルバムを紹介していく企画その②です。
その①→『ビートルズ1のその次に』初心者向けアルバムガイド①
前回書いた初期ビートルズに関しては、ぶっちゃけた話、1stの「Please please me」から5thの「Help!」までどれを聴いても大きくイメージが異なるということは無いと思います。
その中であえて選ぶならば、2ndと3rdがいいかなという程度の話なわけです。
しかし、今回取り上げる「中期」に関してはそういうことは無く、アルバムごとに独立した雰囲気があるため、適当に選ぶと「あれ?」という様な違和感を覚える可能性が十分にあります。
まあ、これは僕自身の話なんですけど、ビートルズ1の中では最初の方に入っている楽曲(初期に相当する)が好きだったのに、初めて買ったオリジナルアルバムは「Sgt.pepper’s lonely hearts club band」でした。
?がいくつ付いたかわからないほど自分の中にあったビートルズのイメージと異なった世界観がそこに構築されており、非常に困惑した記憶があります。
今では普通に好きなんだけどもね。
「中期」の定義について
前回もちょっと触れたんだけども、中期ビートルズというカテゴライズはとても曖昧なものであり、納得できない方も大勢いると思いますけど、まあそれは置いときます。ここでは「Rubber soul」「Revolver」「Sgt.pepper’s~」「Magical mystery tour」そして「Yellow submarine」を中期として扱いますね。
1966-67年という時代
もうひとつ前置きを。中期ビートルズの時代は1966年から67年あたりなわけですが、この時期はロックミュージックにとっての二次性徴期というか思春期というか反抗期というか、そういった時代だったわけです。
中二の夏のようなものだと思っていただきたい。
音も詩も急速に難解で複雑になっていき、音楽によって世界は変えられるかもしれないという青臭くもクソ真面目な思想が蔓延しはじめていました。果てはドラッグや宗教と結びついて、愛と平和を世界に発信するツールとしてその価値が問われていくのでした。
そんな60年代の終焉へ向けて少しずつ混沌の影がその姿を現し始めた過渡期とも言える時代です。
そして時代と同調するように、いや、時代を牽引するように、ビートルズが奏でる音色にもその変化がはっきりと表れてくるのでした。
これを聴け!
ようやくアルバムの紹介になります。中期以降は順を追って1枚ずつ解説します。
Rubber soul(1965)
ここに来て初期とは全く異なる雰囲気を纏った6thアルバム。前作(Help!)あたりから見られるボブ・ディランへの傾倒や、これまでのポップミュージックで使われなかった楽器の使用、スタジオでのエンジニアリングによる音づくりなど新しい時代へ足を踏み入れた感がある。
ぐにゃりと歪んだジャケット写真がこれまでの優等生っぽさを打ち消していて、どこか挑発的な印象を与えていると思う。
これまでと比べ、アルバム一枚を通してどことなく統一感のようなものを感じさせる作りになっている。この辺りから、ポピュラーミュージックの世界はアルバム1枚単位を作品として評価する時代へと突入するのでした。
のっけから楽器の絡みがカッコいいM1「Drive my car」、シタールの旋律が印象的なタイトルだけはやたら有名なM2「ノルウェーの森(Norwigian wood)」、アメリカや日本でシングルカットされヒットしたM4「Nowhere man」、疾走感のあるM6「The word」、メランコリックでアンニュイな感じがたまらないM9「Girl」、鍵盤が美しい名曲M11「In my life」と聴きどころが目白押しである。M12「Wait」も好きだな。
個人的には全体的にソフトロック的で白っぽい印象を受ける。それでいて俯瞰的に見ているというか、少し遠くからアプローチしている様な距離感みたいなのものを感じる。それは私だけかもしれないが。
ビートルズは66年の夏以降、活動の場をライブからスタジオに移してやりたいことをやるというスタイルへと変容するのだが、そこに至る最初の動きがこのアルバムでは見られる。
まことに全く名盤であります。
Revolver(1966)
続く7thアルバム。名盤です。めちゃくちゃカッコイイですこれ。前作に見られた新たな試みがさらに一歩踏み込まれているイノベーションな1枚。テープ素材を使用した逆再生音やサンプリングの様なループ音の使用、音を微妙にずらして重ねるなどのアイデアと新技術に彩られた実験的な作品。もはやライブでの再現は不可能になった。
それに加え、ドラッグ体験がもたらした新たな知覚の扉の開放は難解さを帯びた詩となって形作られ、本作に独特の高揚感を与えている。クスリ!ダメ!ゼッタイ!
前作とは対照的に骨太でラウドな音づくりがなされている。
シニカルでふてぶてしいジョージの名作M1「Taxman」、サイケな気だるさが心地よ過ぎるM3「I’m only sleeping」、LSDの影響下にあるM7「She said she said」、ギラギラなロックチューンM9「And your bird can sing」、ホルンの音が印象的な深みのあるM10「For no one」、そしてテープの逆再生と速回し、ミニマルループなドラムミングと東洋哲学の影響を受けた歌詞、インドの楽器が合わさったサイケデリックな問題作 M14「Tomorrow never Knows」と全編に渡って刺激に満ちており、個人的にはオールタイムベストな1枚。
シングル集であるビートルズ1の印象で本作を聴くと違和感を覚えるかもしれないが、いずれは必ず聴いてもらいたい1枚。
90年代のパワーポップっぽいイメージがある。そういう意味ではビートルズの中で一番現代的な音なんじゃないかな。
昭和41年の音なんだぜこれ。
ジャケットも最高です。夜中に見ると気味悪いけど。目のあたりが特に。
ちなみに僕が持っているRevolverは1966年当時に東芝から発売されていたアナログレコードなんですけど、これ盤面が半透明の赤色をしているんですよね。当時東芝のウリであった「エバークリーン」という静電気が起きにくい仕様のものだそうです。ホコリついてるけどね。
さてさて、長くなったので今回はここまでにしとうございます。
今回の二枚はそれぞれで印象が全く違うものではあるけれど、ニコイチ的な要素があると思うので二枚セットで聴いてもらいたいですね。
ではまた。