モッズってなんだろう。
モッズ(Mods)、モダンズ(Moderns)の略とのこと。1960年代前半、ロンドンで興った若者文化のひとつ。50年代のIVYファッションを基とした細身スーツに軍物のロングコートを組み合わせるスタイルが有名。派手に改造したスクーターに乗り、R&Bやソウルを愛し、週末はダンスフロアで踊り明かす。10代後半の労働者階級の少年少女にて構成される。
というものです。
モッズを手っ取り早く知る教本としてよく名前が挙がるのが「さらば青春の光」という映画です。モッズじゃないのにモッズとして売り出され泣かず飛ばずだった過去のあるザ・フー(ピート)が製作に大きく関係しております。
リアルなドキュメントではないので、モッズという「遊び」に翻弄され転落する少年を主軸に、モッズのライフスタイルや対立するロッカーズとの抗争などが映画的に描かれる。
モッズを卒業した大人の目線で作られた映画なので、どうにも主人公がかっこ悪く見えてしまう。モッズが「遊び」であるという現実を一人だけ直視できなくて駄々をこねている子供である。
高橋ツトムの「爆音列島」を読んだときにも似た感情を覚えた。
とまあ、あれな紹介の仕方をしたんですけども、好きな映画なのであります。音も映像もカッコイイのである。うん。
当時を知ることの出来ない人間としては貴重な映像資料なのだが、どうにもしっくりこないというか腑に落ちない部分がある。60年代のロンドンを見てきた人たちが作ったものなのだからこれがリアルに近いものだろうし、当時生まれてもいない極東の小僧が何を言おうと無意味であるけれど。
その違和感はモッズの聴いていた音楽と「モッズバンド」と言われる音楽の差に似ている。前者はモッズの世界の外から入ってきた音楽であり、後者は内側の人間が真似て作ったものである。
対立する集団のロッカーズに対する扱いも映画では随分と好戦的であり、抗争のシーンは映画のハイライトとなっている。しかし抗争を煽ったのはメディアであり、実際に乱闘に参加したのは新聞を読んで集まった少年たちであって、当のモダニストは関心が薄かったとの説もある。
「本来のモッズはもっとクールでシンプルで、センスの良さがあった。あえて外してスカを聴くのが信条みたいな。あんなゴテゴテしたバイクになんか乗らない。」なんて主張している人もいる。ピーター・バラカンとか。そもそもティーンの文化ではないとも。
ブームが終焉に向かって加速していくさなかで、過剰に装飾されて低年齢化していくのはよくあることだ。そして本来のマインドは失われて見せかけだけが残っていく。思い当たるような流行あるでしょ?
「さらば青春の光」はどうにもムーブメントの終り頃に乗っかった人間が思い出と資料を集めて作った映画に見えてしまう。公式なストーリーが事実と反することが多いのはよくある話。真相は当人たちしか知る由もない。
モッズの幻想に憧れを持ち続ける自分は、もっとカッコイイものを見たかったというだけのお話です。