かつては週刊少年誌の覇権を握ったこともある存在だが(35年前)、今や「我ら四天王の中で最弱!」と言われても仕方がないほどにその権威は地に落ちている。(発行部数公称50万部)
しかし、いくら雑誌の存在がマイナーであろうとも、コンビニに置いてなかろうとも(最近は置いてる)掲載されている漫画は面白いのである。これだけは断言できる。
ただちょっと万人向けでは無いだけさ・・・。そうさ・・・。
連載が長きにわたっても単行本が出ない!
単行本が1巻しか出ない!
単行本が最終巻だけ出ない!
単行本が10巻に達する頃には打ち切られる!
単行本の紙の質が他誌のものよりも高品質!
書店での棚面積が狭いから長期連載になるとタイトルが変わって1巻からになる!
と色々あるわけだけども、そんなことはお構いなく、ここでは私の愛したチャンピオン漫画を紹介したい。
対象は過去5年以内に週刊少年チャンピオンに連載されたもの。
割と最近とか謳いつつ、過去5年な所が層の薄さを表してたりしますが。
何で7選かというと長くなるから。
チャンピオン作品を読んだことのない人に手に取ってもらいたい作品群です。
バチバチ 全16巻
バチバチBURST 全12巻
鮫島、最後の十五日 既刊2巻
主人公、鮫島鯉太郎の人間的な成長を軸に、相撲に懸ける男たちの熱いドラマを描く。
登場キャラクター一人一人に背景があり、様々な想いを胸に男たちはぶつかり合う。神に選ばれし存在、「横綱」を目指して。
「チャンピオン紳士」と呼ばれる特殊な趣向を持つ人間以外にも手放しで勧められる本格スポーツ漫画。
題材は相撲であるが、柔道やプロレスに近い描写が多い。純粋に相撲漫画として見た場合、リアリティには欠ける。相撲業界というあまり馴染みの無い世界の内情を垣間見ることは出来る。
しかし、迫力のある表現、熱い展開、涙ものの人情話など、スポーツ漫画における美味しいところがギュっと詰まった傑作である。鯉太郎の兄弟子、吽形引退のくだりは涙なしには見られない。
現在は最終章を連載中。
不良の巣窟である市蘭高校サッカー部。荒廃した部を立て直すためにスカウトされた顧問の黒木は、ケンカ自慢の不良4人を中心として新たなスタートを切る。周りからは嘲笑され、何度も廃部の危機に見舞われるなどの苦難を乗り越え、彼らは全国選手権出場を目指す。彼らはその間幾度となく「天使の歌声」に支えられていた。
これは泣く。後半は涙腺が緩みっぱなしになる。第一話冒頭、「あの歌声に応えよう」と全員が涙を流すシーンから始まるのだが、これは最終戦のインターバルでの出来事である。ここに至るまでの300数話で読者は涙の意味を知るのだが、それはとても重く哀しい。構成の上手さが感動をより引き出している。
全40巻と長尺だが、その長さが必要なのだと読み終えて気付かされる。構想通りに進行することが難しい週刊連載でこれを描き切った手腕には敬意を表さずにはいられない。名作。
隕石の衝突によって東京が壊滅してから10年。日本は極度の格差社会と化していた。隕石衝突の爆心地は外界との接触を遮断され、無法地帯のスラム街を形成した。
スラムで逞しく生きる少年栗田陸(リク)は、13歳の誕生日に大切な人「おじさん」を失い、冤罪によって懲役30年の懲罰を課せられる。この世の地獄と称される極楽島特級刑務所へと落とされたリクは、おじさんの仇を討つために脱獄を決意する。
ひたむきに、ただ「明日」を信じ続ける真っ直ぐ過ぎるリクの存在に心を動かされ、共闘する囚人達の物語。と書くと、ものすごく王道な少年漫画の様だが、そこはかとなく「実話マッドマックス」や「実話ナックルズ」の臭いがする特異な作風である。(瀬口忍は過去にマッドマックスで連載を持っていた)
物語は一貫して脱獄をテーマとしており、刑務所内のドラマに終始している。しかし、時折キャラクターの回想シーンで語られる、スラムの描写が非常に魅力的だ。荒廃した世界で必死に生きてきた少年達の悲哀が脱獄の物語に強度を与えている。
泥臭さの抜けない、どこか懐かしいような画風が好きだ。10年にわたる下積みの成果なのか絵は抜群に上手い。
この人を見つけてきた秋田書店編集部は有能。
脱獄が本格的に動き出してからの展開は若干間延びした印象を受ける。着地点が気になる漫画である。
ヤンキー一家の次男坊難破剛(なんばつよし)は、中学時代には既に地元で最強のヤンキーとして君臨していた。しかし、ケンカばかりの日々に嫌気がさし、普通の青春を楽しみたいという想いから高校入学を機に脱ヤンキー決意する。
家族や地元の友人からの期待もあり、普段はヤンキーとして行動せざるを得ない剛。このため、ヤンキーと普通の高校生との二重生活を送ることとなってしまうのだった。
逆高校デビューなヤンキー漫画。剛は素性を知られないがために「変装」して敵ヤンキーとバトルを繰り返す。変身ヒーローの苦悩にも似た悩みを抱えながら送る日々の生活は悲しくもあり、どこかコミカルである。しかし物語が後半に差し掛かったあたりから、物語はネガティブな空気を帯びてゆく。
主人公の剛が良い子すぎて辛い場面が多い。彼はただ普通の青春を送りたかっただけなのだが、周りがそれを許さないのである。
笑えて泣けてほっこりする。小沢としおの最高傑作だと思う。彼の描くクズは心底クズで同情の余地がないのが良い。
ここら辺からチャンピオン紳士向けになっていきます・・・。
一話を読んだ時の期待感と既視感をよく覚えている。あれこれって、うしおととr・・・。
細けぇこたぁいいんだよって気になるぐらい期待感がわずかに上回ったのだ。
線もこなれてないし、話は「まんま」なのだが、女の子が可愛いのである。正義!
主人公の十三塚景(とみつか けい)は身長がやたら低く、幼馴染の女の子、鶴原友恵は170センチを超える長身なのである。これだけである種の特殊な趣向が垣間見れるのである。
女の子の腹筋に対する拘りや、過度に暴力を振るわれる描写(リョナ)など、歪んだ趣向が駄々漏れであった。ありがとう。
メインのストーリーは尺の取り方を完全にミスっており、やたら冗長な部分が目立つ。これらのせいにより唐突な打ち切り宣告を受けたかのようなラスト3話の展開は見ものです。
でもラストが一番読者の見たかったケルベロスなんですけどね。
そして彼は次の連載でも同じ轍を踏むのであった・・・。
ここ最近じゃ最もキレたギャグ漫画だったと思う。他誌を凌げた数少ない作品。
童貞中学生3匹のダラダラとした日常を描く。稲中系と言えば分りやすいだろうか。
チャンピオン作品のパロディネタと下ネタ一辺倒なので好き嫌いは別れると思う。うんこちんこオナニーばっかじゃん。あ、ソレ男子中学生のことだね。
くだらなくもキレキレのギャグの中にほんのり色付くラブコメ展開も良かったり、割と共感できるあるあるネタも効いてた。ある種のトラウマを呼び起こすトリガーがあちこちに配置されていた。
あと女の子が妙に可愛い。正義。絵柄は大してソッチ系じゃないんだけど、それが却って伏兵的というかなんというか。僕は(特に吏毘堂の想像上の)委員長が大好きでした。
途中で改題してタイトルにZが付くが、バトル漫画になるわけでもなければ青い子が脱退するわけでもなく、特に何も変わらない。(これ自体がネタである)
三峯徹氏の描く独特の女の子の絵が世界で一番多く出てる漫画だと思う。この人はデビュー作の時点で既に完成していておののく。絵も実はかなり上手い。
次回作が気になる作家の一人。
売れない漫画家NJこと沼田純の実録アルバイト漫画。漫画だけでは食えないヌマタはスーパーのアルバイトで生計を立てる。鮮魚部の個性的な面々に囲まれ、ヌマタは今日も労働に勤しむのであった。
漫画的なフィルターを通して見たアルバイト先の実態を時にコミカルに時にシニカルに描いている。
1話5ページ構成。どこが面白いのって女の子が可愛いんだよ。さっきからそればっかり。この可愛い女の子たちは実際には40代の女性であるという事実。だから僕は漫画が好きさ。
事実を基にしているだけあって、嫌な人間の嫌な部分が上手く描けていると思う。こういう人間いるよな。あと、魚のさばき方を学べるかもしれない。勉強になりますね。
雑誌を背負って立つような存在では決してないけれど、こういった箸休め的な漫画が面白い雑誌は読後感が良い法則。
NJ先生には是非とも「女の子可愛い」が全開の漫画を描いてもらいたい。
たったの7作品では全然足りない。
今度またやります。次はもう少し濃い目のラインナップで。